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ヤマハFG-450との出会い
この世に生を受けて60年に手が届く。
その長いような短いような年月の間には、節目節目で様々な出会いがあり、
今の自分が存在している不思議を感じることがしばしばある。
今回はそのひとつ、私自身にとっては結構、刺激的だった出会いに触れてみる。
ヤマハFG-450。私がこのギターに出会ったのは今から40年位前の事。
18歳を過ぎ。19歳になる前の頃だったと思う。
ギターを弾き始めたのは15〜16才頃からで、当然の事のように
チープなエレキギターを手にしていた。
音の良し悪しがわかるわけでもなく、うわべのカッコ良さに酔いしれて、
コードが2〜3個弾けただけでも…「もうプロになる!」
などと考えていたような気がする。
高校卒業後上京。いろんな意味で刺激の多い東京。
ギターを抱えたミュージシャン達にも出会う…
渋谷のNHKで仕事をするようになった頃から音楽に触れる機会にも恵まれ、
それまで燻っていたギターへの思いがまた少しずつ熱を持ち始めた。
渋谷の道玄坂にあるヤマハ楽器に、友人とアコースティックギターを
買いに出かけた時のこと。
手に取ってすぐに試奏できるギターを何本か弾いてみて、
その中から当時18,000円のヤマハを探し当てて買う意志を固めていたその時、
ふと目に飛び込んできたのが、ショーウインドウの中でひときわ輝いて
こっちを見つめている彼、その彼こそがヤマハFG-450だった。
450という数字は価格表示であり、つまりそのギターは45,000円ということになる。
ずいぶん昔の話で当時私の給料はと言えば30,000円チョイ。
とても買えるような代物ではない。
「45,000円、高い!」心の中で何度も叫びながらも、そのスタイル、
その色合い、一目惚れとでも言おうか、思わず店の人に
「すみませんがこれ、ちょっと弾かせてもらえませんか?!」
と声を掛けてしまったのが大まちがい(今思えば大正解だったのだが…)。
何とすばらしい音なんだ!何と弾きやすいギターなんだ!今このギターを買わなければ…!
悪魔(天使?)が耳もとでささやいた。
所持金は前日もらったばかりの給料30,000円。「う〜ん、はぁ〜、う〜ん」。
揺れ動く気持ちにピリオドを打ったのは隣でその様子を見守っていた友人の一言だった。
「20,000円位なら貸してやるよ」その声を聞いた時にはもうすでにレジへ向かっていた。
こうして手に入れた、ヤマハFG-450。25〜6年間は弾いただろうか?
今ではフレットに深いミゾができ、弦がビビる、ボディもキズだらけ…
60歳も近くになり、当時よりは多少余裕(?)もでき、ギターの腕もチョッピリは上達し、
Gibson・Fender・Godin等、さまざまないい音との出会いを重ねてきたが、
彼に勝るギターには巡り合えていないような気がする。
実質的な問題ではなく、「思い入れ」…自分自身を熱くさせてくれる何かがそこにはあった。
念願のライブハウスMO:GLAをオープンしてもうすぐ10年。
音楽を楽しみ、毎日をより充実したものにするために、
あの頃のような感動的な出会いを重ねていきたいと思っている。
因に、今でも時々ライブで歌っている「こいつ」は、彼との出会いを描いた曲である。 |
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